このコラムはワールドミュージックコースのFacebookからの転載です。
音色向上のための練習方法については、力を抜いて指を正確なポジションに鋭く振れるようにしていくことが基本になりますが、指を振り下ろす時に、同時に次の動きに移りやすい体勢になっているようにするなど、速い動きにも対応できるように、指の動きの流れも考慮してフォームのセッティングをしていきます。それぞれの音の呼称と演奏を結びつけて稽古することで、言葉の通りに演奏できるようにしていきます。
(逆瀬川健治)
リズムは数の組み合わせですが、同じ数でもその組み合わせ方によってまったく違う感じになります。たとえば、12拍のリズムを6+6あるいは3X4のようにすると3拍子のノリが続く感じになりますが、それを5+7、7+5、あるいは4X3のようにした時には、フレーズが拍からずれるように感じるノリになりますが、総計は12拍なのでリズムがずれるようなことはありません。このように短い数の組み合わせを変えることでいろいろなノリが生まれて来ます。(逆瀬川健治)
11拍のカウントで5.5拍のフレーズを2回やると、2回目のフレーズがすべて裏拍子になります。(1234+1.5)x2=11サンプル画像添付同じく奇数拍のものも、下記のように同じようにできます。9拍=4.5(=123+1.5)x27拍=3.5(=12+1.5)x25拍=2.5x2(=1+1.5)x2このように、拍の表と裏を稽古して把握することで、より揺るぎないリズム感を鍛えることができるかと思います。
因に、この1.5をSawariと呼んで使います。たとえば、2+2+2+2+1.5+1.5で、11拍子になりますが、これは、ChartalKiSawariと呼ばれるリズムになります。インドのリズムのコンポジションは、数の組み合わせや掛け合わせを、基本になるリズムのサイクルの拍数に合わせて、計算して構築されているものでもあるので、拍子からずれていくように展開していても、最終的に合うように考えて進行していきます。
(逆瀬川健治)
以下の1~8は、1拍(1マトラ)の中にいろいろな音、フレーズを入れて2拍目へと導くことで間をつないでいくリズムのサンプルです。
12
1.Dha---|Dhi---
2.Dhi--te|Dha---
3.Dha--Kre|Dhi---
4.Dha-terekete|Dhi---
5.Dha--trkt|Dhi---
6.Dha-guDhatiDhagena|Dhi---
7.Dha-TRKTTKTKTRKT|Dhi---
8.Te-Te-Dha-TRKTDha-TRKT|Dhi---
ターラのリズム理論に「ラヤカリ」という概念がありますが、それは、1拍(1マートラ)の中に入れる音の数によって速度を変化させる、というものです。
ドゥグン=1マートラを2分割
ティグン=1マートラを3分割
チョウグン=1マートラを4分割
パンチグン=1マートラを5分割
チェグン=1マートラを6分割
サットグン=1マートラを7分割
9~11で以下のようなラヤカリにより、速度に変化をつけるフレーズを記載しています。
9.ティグン=1マートラを3分割
Dhi--|Dhagena|Dha-TRKT|DheTeTe|Dhi---
10.パンチグン=1マートラを5分割
Dhi-Dhagena|DhatiDhagena|Dhi-Dhi-Dha|genaDhagena|Dhi---
11.サットグン=1マートラを7分割
Dha-naDhagetete|Dhetetenagutete|DheteteDheteteDha|geteteDha-TRKTTK|Dh
ボルの数の単位がそれぞれのニュアンスを持つので、アーティキュレーションとなるアクセントなどの位置は、言葉にアクセントがあるような感じと同じように決まっていきます。
注・「Matra」(マートラ)現代のインド音楽理論では、西洋音楽における1拍と考える。
・インドの伝統的譜面では、テンポ記号がなく、楽曲(または即興フレーズ)の各セクション(楽章)に適切なテンポが経験により選択される。(逆瀬川健治)
・テンポが速い曲、難しくてうまく弾けない部分の克服方法
うまく弾けない部分を克服していくには、全体の動きをパーツに分けてうまく動かない動きを集中的に稽古することで克服できると思います。
・スケールやアルペジオといった基礎練習との関係性、取り組みかた
同じスケール、アルペジオ、フレーズを稽古する際に、アクセントの位置をいろいろと変化させることで、それぞれ違うニュアンスになり、いろいろなところに意識を集中できるような力のバランス感覚を習得する訓練にもなります。
難易度の高い箇所を習得するためには、全体を分割してそれぞれの動きを個別に稽古し、それぞれの動きを繋げていくという稽古をしていくことで全体をスムーズにできるようになるかと思います。(逆瀬川健治)
表現力を高めるために何をすべきなのか
即興演奏の表現力については、解決したいと思っている音に向かってどの様に持っていくか、というところが聴かれる要素になるかと思いますが、すぐに結論に至るよりは、当たり前の流れを外した意外性は刺激を与える要素にもなり、即興演奏の場合にはその様な表現をすることも多いです。例えば、一目に終始感のあるインドのリズムでは、わざと一泊目を外しながら迂回してようやくたどり着いた時は、当たり前に一拍目に至るよりもどうなるんだろうといった様なプロセスを通ってから至る方が、インパクトも大きくなります。会話でも意外性があるjほうが印象深くなるように、結論に至るまでの過程は結論が見えていない人には、いろんな要素の話の流れの関連性があまり把握できにくい状況で、そこから話の関連性がわかった時に、安心して納得するという方が、分かり切った流れの話よりは印象深くなるのと同じようなところがあるかとも思います。
ひとつのものをどの様に見せるか、というところに微妙な思惑が見えてくるような表現は楽しめるものかと思います。(逆瀬川健治)