このコラムはワールドミュージックコースのFacebookからの転載です。
オカリナについて皆様どのようなイメージをお持ちでしょうか?他の笛と違い丸みを帯びた形、そして金属に比べると柔らかく密度の低い『土』でできていることによって独特の音色が生まれるのが最大の特徴です。リコーダー等のように吹けば誰でも音の鳴る笛ですのでそのオカリナらしい音色をイメージして息の強さを調整してみてください。
強すぎず、弱すぎずその楽器が一番響くポイントを見つけ、キープすることが大切です。(茨木智博)
リズムについてお話する前に、そもそもオカリナはどんなジャンルの音楽を演奏するべきなのでしょうか?その答えはまだ僕もわかりませんが、その代わりあらゆるジャンルに挑戦しています。そしてオカリナはそれができる楽器だと思います。ですのでクラシックや、ジャズ、民謡などそれぞれに違ったリズム感や歌い方を他の楽器の奏者同様に勉強する必要があります。『他の楽器』の中でも管楽器類の演奏法は基本的にオカリナの参考となるでしょう。つまりタンギング、フィンガリング、息遣い等からリズムが生み出されます。そしてまず重要なのが「タンギング」。次回はタンギングとリズムの関係をお話します。(茨木智博)
リズムと、管楽器でそれを生み出すための「タンギング」について引き続きお話します。もし他の楽器の経験がある方がオカリナを吹くと、意外と強いタンギングが必要な楽器だということに気が付くかもしれません。オカリナは繊細な優しい音色の楽器ですがその分、音の立ち上がり、音の終わりをはっきりさせないともやもやとした演奏になってしまいがちです。これから演奏しようとする曲のリズムをまず口で「tu-tu-」などの発音で歌ってみて、同じように楽器で表現してみてください。早いタンギングやフィンガリングがあるときもまずは楽器を口から離した状態で練習してみてください。そこではっきりとリズムが作れれば楽器でも演奏できると思います。またアーティキュレーションの扱いもとても重要です。これについてはまた後々お話したいと思います。(茨木智博)
オカリナの演奏でとても重要なことの一つは他の管楽器と同じようにアーティキュレーションをコントロールし、歌うように発音を操ることです。そのやり方は基本的にはどの楽器も変わりませんので様々な楽器の演奏やエチュードを参考にすることができるでしょう。例えば私の場合はトランペットの経験がありますので、そのノウハウがオカリナにもダイレクトに生かされています。スラーの掛け方、音の長さに至るまで自分の演奏と、先人たちの演奏に耳を傾けてみましょう。沢山の発見があります。ただ一つだけ、オカリナならではの難しさとして音の処理の問題が挙げられます。消えるような音の処理がオカリナでは基本的にできませんので、時として不自然になりがちな部分をいかに自然に聞かせるかの工夫が必要です。音を止めるほんの0,数秒でも変わってきますので普通の楽器以上に繊細に聴いてみてください。(茨木智博)
日々の練習は必ず演奏に現れてきます。ただし同じようにやる気を持って練習していても成果が人によって違う場合があることもまた事実です。中にはやる気があっても時間が僅かしか取れないという人もいるでしょう。したがって「効率の良い練習」というのが大切で、上達への近道だと思います。まず、練習の上手な人は自分の音を聞くことに長けているのかなと思います。オカリナの場合ちょっとした息の変化で音色の良し悪しが変わってくることは既に体感していただいたかと思いますが、フレーズの中で常にどんな音色で演奏しているか自分で聞くことが大切です。一つ一つの音が美しい音になるよう音楽の流れに合わせてコントロールしていくと良い習慣として徐々にそれが自然にできるようになっていきます。逆に美しくない音のまま何度も練習してしまうと場合によっては悪い癖として残ってしまうこともありますので気を付けましょう。そして練習内容の組み立て方も大切です。自分の限られた練習の中でバランスの良いメニューを考えましょう。私のレッスンの場合大きく分けて「ロングトーンやシンプルな音階練習」「タンギング」「スラー」「フィンガリング」「その人にとって少し難しいと感じるレベルの練習」と、このあたりの要素を得意不得意によって組み合わせながら練習内容を組み立てていきます。その時常に先述した美しい音色を意識することが大切です。少し難しい練習をやる時には必ず先ずは自分の「耳」が付いてこれるスピードで練習します。出したいタイミングで出したい音が出る、ということがもちろん難しいのですがオカリナの場合集中力次第で初心者でも充分可能なことだと思います。あとは最終的には難しいことを考えずに思い切り気持ち良く吹いてみてください。その時に自分の音がきれいだと感じられればとても良いことだと思います。自分の欠点を探すことも大切な練習ですが同時に良い部分も沢山見つけて、感じ取ってみてください。それはより豊かな表現力に繋がっていくと思います。(茨木智博)
オカリナの醍醐味は何といっても朗々と美しいメロディを奏でる瞬間にあるのではないでしょうか。しかし実はオカリナの演奏は単調になってしまいがちです。一番の問題は音量でしょうか。他の楽器に比べて小さめの音量で、さらに自由に音量を変化させることができませんので、何か別のことで表現力を出していかないといけません。そこで私は「弱点がある分、その他のできることは何でも100%以上発揮して全力で表現する」ということを心がけています。できることとは何でしょうか、タイミング、ビブラート、僅かな音程の上げ下げ、装飾音符やフェイク、楽器から出る雑音、曲のアレンジ、演奏する前のトーク、まだまだ色々あると思います。それらをどれだけ活かせるかなのですが、もう一つ気をつけておかなくてはならないのが「不自然にならないこと」だと思います。音楽にはその流れから生まれる「自然」「必然」がありそれに逆らうような強引な表現方法はむしろ聞き手に不快感を与えてしまいます。音楽のジャンル、背景、伝えたいことを明確にしてそれに合った表現方法を使っていきましょう。極端に言えば時には「何もしない」が表現方法の瞬間もあるのです。表現方法は人によって様々で無限にあるのですが、人の心を打つ表現の仕組みをなるべく沢山体感することで自分の表現も出来上がっていくと思います。オカリナの演奏を参考にするのも確かにわかりやすいのですが、他の楽器や歌などからオカリナで表せる以上の表現力を沢山感じ取ってみてください。それをどれだけオカリナで表現していけるのかがこれからこの楽器に取り組む私たちの課題だと思います。(茨木智博)