このコラムはワールドミュージックコースのFacebookからの転載です。
フラメンコギターでは親指が重要ですね。基本的にアポヤンドで弾かれるのですがアルサプーア、ラスゲアードも含め常に弦が表面版に対し平行に振動するようにタッチします。ただこれは自分で音を聞いて判断しながらフォームを固めるしかありません。ちなみに間違ったタッチで弾かれたギターは音が籠って立ち上がりが悪くなってきます。心当たりのある方は改善していきましょう。(今田央)
フラメンコギターは唄(カンテ)と踊りの伴奏楽器として発展してきたためリズム感(もちろん器楽奏者としてのタイム感は必要)よりさらに揺れのあるコンパス感というものが必要になります。各コンパスが持つ固有のアクセントを音量で表現してはいけません。長さで表現する。スペイン語やイタリア語はアクセントの音節をを伸ばしますがあの感じです。伸ばした分は他で縮めるのですがこれがコンパス感になります。(今田央)
前回お話ししたコンパス感を養うにはパルマ(手拍子)の習得が必要です。このパルマ、専門家がいるくらいで奥が深いのですがとりあえず稽古伴奏で叩けるくらいにはなりましょう。音と音の間を埋めようがないので自分で間を作っていかないといけませんし、アクセントの叩き方とか視覚的にペソ(重さ)を感じられます。最初からブレリアは難しいのでセビジャーナス辺りが良いと思います。(今田央)
本来フラメンコギターのフレーズ(ファルセータ)はカンテ伴奏のためのイントロや間奏で、メロディーというより雰囲気作りが大事でした。初期のSP盤等の伴奏を聴くと簡単なフレーズながら鋭い音質と間で唄を支えているのがわかります。今はCDでも聴けるのでコピーしてみるのはいかがでしょうか?当時のフレーズは今でも通用するからレパートリーも増えて一石二鳥だと思います。(今田央)
練習法ですが楽器を弾くことは基本スポーツと同じで自分の最高のポテンシャルが出せるフォームを見つけてそれを維持することです(音楽的表現は別)。基礎練習は常に鏡(姿見がよい)の前でフォームを確認しながらやりましょう。特にフラメンコギターはラスゲアード、アルサプーア、P指が1弦まで弾弦する等右手のフォームのバリエーションはクラシックギター以上です。足を組んで引くフラメンコギターの構えは右指と弦の角度が鋭角になりやすく、初心者だとピック弾きみたいなフォームになりがちです。一つの提案ですが、伝統的なフラメンコギターの構えで練習してみてください。弦と右指の角度が労せず直角に近くなり、よりフラメンコ的鋭い音が出せると思います。(今田央)
これまでも書いてきましたがフラメンコギターは歌と踊りの伴奏楽器という立場でした。ギターや踊りの技術面は目覚ましい進歩がうかがえますがフラメンコの核である歌(カンテ)は録音が残っているもので比較する限り進歩や発展はあまり見られません(むしろ曲種は減っています)。つまりフラメンコギターの表現に限れば大事なことは100年以上前から変化がなく、昔の音数の少ない演奏のほうがよりフラメンコのエッセンスに溢れているといえます。カンテは独特な発生や節回しで民族音楽として独自な道を歩んできました。ところがフラメンコギターは民族楽器ではなく所謂クラシックギターをそのまま流用しています。いくつかの特殊奏法はありますが技術的な表現はクラシックギターと同じで差を求めるとすれば音の個性、間の取り方、カンテへの寄り添い方等、伴奏を追求することにしかないと思います。今はyoutubeでいくらでもこの演奏を聴けます。 余談ですがたまにギターが弾ける“カンタオール(フラメンコ歌手のこと)”がいます。彼等の演奏はテクニカルではありませんが十分にフラメンコを感じさせます。(今田央)