2020年3月8日、私たち3名はドイツ、バート・ブリュッケナウにおいてコンサートに出演する予定でした。
2018年3月にミュンヘンにて出演したチャリティコンサートを企画してくださったリヒター恵子さんが再びコンサートを企画してくださったのです。
リヒターさんにはいろいろな会場に実際に足を運んで頂き、また会場が決まってからもチャリティコンサートということでホール代の割引の交渉や、地元の音楽学校に掛け合い練習スタジオ代なども無料にして頂いたり、パンフレット作成、集客のための新聞の取材、また前回コンサートにご来場頂きましたご縁から在ミュンヘン日本総領事館からの後援も頂戴するなど本当にあらゆる面で動いて頂きました。
そして今回も洗足学園被災地支援委員会の先生がたにはコンサートの趣旨をご賛同頂きまして、前回に引き続き会場費などの経費をご負担して頂けることになりました。
日本とドイツで何度もやり取りをして、このように計画を立てて来ました。
やっと全ての準備が整い地元の新聞にも大きく取り上げて頂いた2月初旬、「アジアでウィルスが流行り始めているみたいだけど大丈夫かな?」とリヒターさんから連絡を頂きました。
まだ、中国の一部の地域で流行っている程度で、自分たちのこととはまだ思えなかった私たち。上海在住時代にSARSを経験しているリヒターさんご夫妻の危機意識に、まだこの頃はついて行けていませんでした。
ここから毎日のように4人で電話会議です。新聞に大きく載ったことでお客様からのお申し込みは日に日に増えている状況で、本当に迷ったのですが、万が一にも私たちが日本からバート・ブリュッケナウに行くことでウィルスを持ち込むことになったら・・・
ここまで大変なご努力で動いてくださったリヒターさんご家族に大変なご迷惑がかかる、それだけは絶対にできない、と苦渋の決断で2月下旬に渡独を諦めました。
その時はどちらかというとアジアの問題で、まさかヨーロッパやアメリカが今のような状況になるとは想像もできませんでした・・・
2月下旬には少しでもチャリティの足しになるように、また日本でも聴きたい!とおっしゃってくださるお声に応えて、東京と神奈川、2箇所でハウスコンサートを企画していました。
そちらだけでもやりたかったのですが、やはり感染リスクを考えて中止に致しました。
本当に残念で、空気の抜けた風船のようになっていた時に、「コンサートが無くなり残念です。でも寄付はさせてください」と寄付金を送ってくださった方が数名いらっしゃり、私たちは皆様のお気持ちに涙が出るような思いでした。
他にも自宅のレッスンに来る生徒さんが、私たちが着なくなったドレスを購入してくださったり、着なくなった子供用ドレスをたくさん寄付して頂き、それを購入して頂くことで寄付金にしたり、少しずつ寄付金が集まり、総額79,414円を寄付することができました。
こちらには前回ミュンヘンのコンサートのあとに寄付してくださったドイツ在住日本人の方からのご寄付も入っています。日本語教師として教えていらっしゃるクラスの方々にご寄付を呼びかけてくださり、リヒターさんに送ってくださったものを私たちがお預かりしておりました。
暖かいお気持ちを寄せてくださった皆さまに、この場をお借りして心よりのお礼を申し上げます。コンサートは実現できませんでしたが、様々な体験からたくさんのことを学ばせて頂きました。
いま世界的にコロナウイルスが猛威を奮い、新学期のスタートも遅れることになりました。
まだまだ収束の見えない時ですが、私たち音楽家にできることは何なのか探して行きたいと思います。
荻野(脇本)美惠子
塩塚美知子
西川麻里子